続々・日本の移民政策

新聞の論壇時評「観光客と留学生 『安くておいしい国』の限界」(注①)から引用してみる。

「……日本では、観光客だけでなく留学生も増えた」が、その「増え方には特徴がある」という。「日本は非英語圏で、日本語習得は難しい。それでも留学生が集まるのは、『働ける国』だからだ。日本では就労ビザのない留学生でも週に28時間まで働ける。……」しかし他国では、留学生の就労に厳しい制限がある。「そのため『日本に来る留学生の層は、おのずと途上国からの「苦学生」が多くなる』……。」日本では、技能実習生や留学生などの「受け入れが不透明なので、労災隠しなどの人権侵害も数多い。こうした外国人が、コンビニや配送、建設、農業など、低賃金で日本人が働きたがらない業種を支えている。……外国人で低賃金部門の人出不足を補う政策は、人権軽視であるだけでなく、早晩限界がくるだろう。」「外国人のあり方は、日本社会の鏡である。外国人観光客が喜ぶ『安くておいしい日本』は、労働者には過酷な国だ。そしてその最底辺は、外国人によって支えられている……。」もちろんこれは日本で働く外国人だけでなく、日本人の問題でもある。「私は、もう『安くておいしい日本』はやめるべきだと思う。……そうしないと、低賃金の長時間労働で『安くて良質な』サービスを提供させるブラック企業の問題も、外国人の人権侵害も解決しない。デフレからの脱却もできないし、出生率も上がらないだろう。」

日本人の1人当たりGDPは「(19)95年の世界第3位から(20)17年の25位まで落ち」ている。これからは人口も急激に減少するし、高齢化社会はますます進展する。人口が少ないことは、悪いことばかりではない。そもそも明治の初め(明治5年)の日本の人口は、3500万人くらいであった(注②)。もう、借金(国債を発行)をしてまで、高い、経済の成長を目指すのはやめ、長時間労働もやめ、たとえ「経済大国、日本」でなくても、人にやさしく、人権も守られ、暮しやすい日本であればいいのではないか。

(注①)小熊英二「観光客と留学生 『安くておいしい国』の限界」(朝日新聞2018年5月31日)
(注②)総務省「人口減少時代」(PDF)
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日本の財政(3)日本財政~受益と負担の望ましいあり方

井手英策著『日本財政 転換の指針』から、ほんの一部分だけだが、引用してみることにする。<>内は私の補足。
「人びとは財政再建のための増税には、強く反対している。受益なき負担増は、強い租税抵抗となって、さらに次の増税の足かせとなる。」「増税というのは、政治家にとって、大変な難題である。だからこそ、租税負担の公平、受益と負担のバランス、人びとのニーズを的確に捉まえるための予算制度改革等、ありとあらゆる努力がなされなけらばならない。」
「私たちは、これまで、『財政再建至上主義』の政治に翻弄されてきた。私が示したかったのは、この巨額の財政赤字の原因が何かと問われた時、それは、税収の決定的な不足であり、そして人間の尊厳に対する配慮、社会的な信頼の欠如こそが、この不足を生み出している、という可能性であった。……<財政>支出削減がその<財政再建の>処方箋とされてきたことは、犯人捜しの政治を定着させる不幸を生んだ。……財政再建そのものを目的化し、財政の危険性を喧伝するだけでは、恫喝と変わらない。」「財政再建とは、目的ではなく、人間の尊厳を何よりも大切にし、信頼し合える社会が導き出す結果に過ぎない。」
本書は、「……受益と負担の望ましい在り方」を提言。何よりも「納税の合意形成」を大切にしている。この意味で「単なる」財政再建論の本ではない。

筆者はさらに次のようにも記している。「日本の租税負担率は先進国でも最低水準だということはよく知られている。にもかかわらず税の痛み、つまり痛税感は、先進国の平均よりも明らかに高くなっている。……税負担が大きいことで知られる北欧四か国の痛税感はあまり高くなく、それどころか日本より低い……。」これらことは、「政治に対する信頼度」の違いから生じているに違いない(注①)。

「日本の租税負担率は先進国でも最低水準だ」というが、もしこれに巨額の財政赤字(政府+地方)、すなわちこれからの「返済」を考慮すれば、決して租税負担率が低いどころではない。「日本と北欧諸国の実質負担率は、ほとんど変わらない。」異なるのは、この膨大な債務を、「これから」(ほとんど次の世代以降が)租税などで支払っていかなければならないことだ(注②)。

最後に本書から次の引用をして終える。「医療、教育、福祉などのあらゆる面において、人間が人間らしく生きていくための基盤を整えること、しかもそれを貧しい人に救済の烙印を押すことなく、人間の権利として保障していくこと、これが財政の追求すべき姿である。だからこそ、人間に必要なサービスの給付であれ、課税であれ、人びとは等しく取りあつかわれなければならない。」詳しくは資料①②を読んで欲しい。

<注>
①「政府に対する信頼度についての調査で、日本は先進国中、ほぼ最下位です。人間に対する信頼度はどうかというと、二八ヵ国中二一位と、こちらもかなり低い。政府も人間も信頼しない社会ができあがってしまった、それが今日の日本なのです(「国際社会調査プログラム(International Social Survey Programme)。」(資料②より) また、資料③も参照して欲しい。
②資料②の「借金を返さなくてもほんとうに大丈夫なのか」も参照して欲しい。筆者は制度や発想を変えれば、「財政赤字や借金はたいした問題ではない」と述べている。詳しくは本書を読んで欲しい。

<資料>
①井手英策著『日本財政 転換の指針』2013年
この著書は、「西島健夫の読書日記」(2013年2月)や「ようこそ!千田孝之のホームページへ」(「読書ノート」2013年10月)など、多くの書評やブログで取り上げられている。『週刊エコノミスト』(毎日新聞出版)によると、「ひたすら歳出削減によって『財政再建』を図ろうとする現代日本の財政運営」に「著者は真っ向から異論を唱え」ているという(同誌2013年4月16日)。
②井手栄策著「沈潜し、再浮上する財政の歴史『いま』を読み解く」(一色清他編著『明治維新150年を考える』所収)2017年
③川本裕著「日本国民の政治家への信頼度はなぜ世界最低レベルなのか」(DIAMOND online)

日本の財政(2)国と地方の借金1000兆円時代

時事ドットコムニュース「2018年度予算案を家計に例えると…」(下記の資料①)より引用する。この記事の数値を利用すると、国の借金の状況は以下のようになる。

(1)2018年度予算案の構成(百億円以下切り捨て)
●歳入⇒97.7兆円。内訳①税収63.9兆円(注①)、②新規国債33.6兆円(国の借金)
●歳出⇒97.7兆円。内訳①政策経費74.4兆円、②国債費23.3兆円(元金と利子の返済)

(2)2018年度予算案を家計に例えると…
●収入⇒977万円。内訳①年収639万円(注②)、②借金336万円
●支出⇒977万円。内訳①生活費744万円、②借金返済233万円(利子を含む)

「2018年度予算案を家計に例えると」次のようになる。年収639万円の、ある家庭が、1年間に336万円借金をして、同じ期間に合計977万円支出している。この支出977万円のうち、生活費に744万円を使っている。また借金返済(元利合計)に233万円をあてたが、新たに336万円を借金しているので、借金は増えるばかりだ。こうして、これまでの借金残高(国債残高に相当)は年度末に8830万円にものぼる。逆に言えば、年度末に借金残高が8830万円(実に年収の15倍近く)にもなるのに、返済する以上の借金をしていることになる。

平成29年度(2017年度)末でみると、国の借金に地方の借金などを加えた長期債務残高は1000兆円を超えている(同年度末で1093兆円、下記の資料②)。実は、一般会計予算だけをみているだけでは、実際の国の「借金」の状況を正確に把握できない。一般会計の規模を小さく見せるため、一般会計に計上せず、あらかじめ補正予算に組んで追加することを見込んでいるためだ。したがって、「予算」より「決算」をみないと、国の借金の実態を正確に把握できない(注③)。さらに一般会計の赤字分を特別会計に一時的に繰り入れて、一般会計の赤字幅を小さく見せている(注④)。下記の資料③を参照してもらいたい。

<注>
注①税収には「税外収入」も含む。百億円以下は切り捨てているので合計は一致しない。
注②年収(家計の例え)には「妻のパート代」を含む。なお、「一般会計総額を1000万分の1に圧縮し、年額に見立てた。1万円未満は切り捨てのため合計は一致しない」。「年収639万円」の例では非現実的というのなら、「1世帯月収30万円」で「日本財政を家計に例え」ているのが、資料④。
注③「補正予算は歳出抑制ルールに縛られず抜け道に使われがちだ。」(日本経済新聞2017年12月22日)「当初予算案で抑えた分は補正予算で手当てする。」つまり、「補正予算という抜け道」があるということ(朝日新聞2017年12月23日)。「景気対策」などと称して補正予算を組み、さらに財政の赤字を増やしている。「決算」をみないで「予算」だけをみても、国の財政赤字の実態は正確には分からない。(ここでは財政投融資の問題には触れない。)
注④「一般会計+特別会計」で予算を見ると次のようになる(以下、資料③より)。
●一般会計・特別会計の純計ベースの歳入(2012年度当初予算)
歳入合計241.0兆円、公債金及び借入金116.1兆円
⇒「公債金及び借入金」(借金)の「歳入合計」に対する比率48.2%

●一般会計・特別会計の純計ベースの歳出(2012年度当初予算)
歳出合計228.8兆円、国債費(借金返済)84.7兆円(元利合計)
⇒「国債費」の「歳出合計」に対する比率37.0%
※一般会計と特別会計の合計額から会計間取引の重複分を除いた純計。「歳入には2013年度の借換債の12年度への前倒発行分」などが含まれるので、歳入と歳出の合計は一致しない。

<資料>。
①時事ドットコムニュース「2018年度予算案を家計に例えると…(2017年12月)
時事ドットコムニュース「2018年度予算案・2018年度予算案の構成(2017年12月)
②宇波弘貴編著『図説日本の財政』(平成29年度版)
③田中秀明著『日本の財政 再建の道筋と予算制度』
④小黒一正著『財政危機の深層 増税・年金・赤字国債を問う』(第1章「財政の現状はどうなっているのか」)

日本の財政(1)「シンプルでわかりやすい税制に」

ある新聞の投書欄に「区の税の課長時代」の体験として、次のように記している投稿があった。「『住民税が前年の3倍だ。間違いないか』と老人が泣きそうになっていた」という。この投稿者はさらに次のように記している。
「この時は所得税の減税で調整されてはいたが、税制の改正はわかりにくく、周知されないうちに実施されていると感じる。……私は、『税』は納税者にわかりやすく、自分の税額は自分で計算できるくらいのシンプルなものであるべきだと考える。現状は、自分で理解して計算するのはとても難しい。税制は、改正の連続と租税特別措置などによりつぎはぎ状態で、本来あるべき姿が議論されていない。」(注①)

私は学生時代、経済学部に在籍していたが、「財政学」を専攻していたわけではない。だが財政問題には、強い関心がある。「国の膨大な借金の返済方法や社会保障費の増大化の対応策」を「国民も参加し、根本から見直す時期にきている」という、この投稿者の考えに賛成だ。国などの長期債務累積問題を「国まかせにしてはいけない」。「私たちの世代は緊急事態ではない」とか、「ギリシャなどとは異なり日本は安全だ」(「内国債だから大丈夫」)などという人もいる。しかし、「現在」は安全と思われても、「次の世代以降」も安全とは限らない。子や孫の世代のために、この問題を早急に、かつ真剣に考る必要がある。

「現状で財政がなんとかもちこたえているのは、……『将来世代へのツケ送り』という犠牲の上に胡坐(あぐら)をかいている結果にすぎない。」「現行の<財政>制度では、将来世代や若い世代から上の世代へ、富の移転が行われている。その格差は是正されるどころか、どんどん拡大しつつある。国債発行はその典型で、将来世代に請求書を送りつけることで老齢世代が富を得ているようなものだ。」(注②)仮に、たとえそうであるとしても、今頃そう言われても困る、というのが高齢者世代の言い分だろう。高齢者世代からすれば、勤労者であったときは国の指示通りに年金保険料を支払い、また国の約束にしたがって年金を受け取っているにすぎない。また高齢になれば、だれでも医療のお世話になる機会が増えるものだ。まるで自分たちの「存在」自体が悪いことのようにいわれるのは心外だ、と思っているに違いない。

高齢化が急速に進展するのは、ずいぶん以前から予測されていた。少子化が進展するのもしかり。政府はこれまでに、少子高齢化がもたらす問題に少しでも有効な対策を打てただろうか。「消えた年金」でも分かるように旧厚労省社会保険庁(現日本年金機構)の仕事はいい加減だった。日本年金機構(独立行政法人)の不祥事は今も続いている。民間人の年金管理はおざなりだが、公務員などの共済年金は「消えていない」。「グリーンピア」事業に代表されるような「公的年金流用問題」(保険料の年金給付以外の支出)はだれが行ったのか。

予算の無駄な支出はないのか。毎年年度末になると、不要不急な道路工事が行われている(場合もある。わが町でも)。予算は年度末までに「消化する」(使い切る)ことが大切だという。そのほか、ムダな支出と思われる事例は枚挙にいとまがない(注③)。また国・地方を問わず、政治家のこの問題(ムダ使い)に対する意識は驚くほど低い。不正が続く政務活動費の不祥事を見れば分かるだろう。真面目に政治や行政に取り組んでいる政治家や官僚はいるに違いない。しかしこれでは、現況の財政運営を信頼することはできない。増税してもムダ遣いされるのでは……、と多くの国民は思っている。

財政問題は政治問題でもある。これまでの巨額の財政赤字はどうして生じたのか(注④)。そもそも「特例」国債という名の「赤字」国債が最初に発行されたのは、1965年(昭和40年)まで遡る。そして「バブル崩壊」以降、国の借金は急激に増大し、今では対GDP比で200%を超えている。これまでの行政の「失敗」はだれが責任を負うのか。この問題は現在の高齢者の世代よりも、子や孫の世代のほうが深刻だ。国民は「過度に」国の経済政策に期待しすぎていないだろうか。本当に必要なところにじゅうぶんな予算がまわされているだろうか。「どうあるべきか」、未来の選択は国民ひとりひとりに負わされている。

<注>
①「朝日新聞」2018年1月23日。
②小黒一正著『財政危機の深層』(第八章「『世代間格差』を解消せよ」)
③「総務省は毎年、国土交通省や農林水産省、厚生労働省などが自らの公共事業や補助事業の妥当性を評価した結果について、抽出してチェックしている。朝日新聞が2010~17年度の結果を入手して集計したところ」、「総務省がサンプル調査した各省庁の532事業の評価のうち、約4分の1に問題があった」。「公共事業を実施するか否かの妥当性が、多くの事業で不適切に評価されて」おり、「将来の人口減少を考慮せずに事業効果を水増ししたり、維持管理費を無視して費用を過小評価したり」しているという(朝日新聞2018年4月23日)。詳しくは、総務省行政評価局「公共事業に係る政策評価の点検結果」を参照して欲しい。「限られた資源を奪い合う政治、ムダを省くための政治」(注④)になってはならないが、そもそも本来的にムダな支出はやはり削減しなければならない。本当に必要なところに、その予算をまわすべきだ。
④井手栄策著『日本財政 転換の指針』(第三章、第四章)を参照して欲しい。

続・日本の移民政策

HUFFPOSTに「『最悪の移民政策』が招く将来」という記事が掲載されていた。これは「英国で難民や移民の研究をする橋本直子さん(注①)」のインタビュー記事。日本の移民政策は、橋本さんによると、「『移民政策はとらない』としつつ外国人受け入れを拡大し続ける、という最悪の移民政策」だという。

移民や難民の受け入れをどうするかは「日本で賛否の割れる議論だ。賛成派が人道的な側面や労働力不足を理由に挙げれば、反対派は雇用が奪われたり、テロが起きたりする可能性を指摘する」。「かつて西欧諸国も<日本と>同じようなごまかしで外国人の出稼ぎ労働者を受け入れてきた……。彼らが社会になじむ政策を怠った結果、人びとの分断や貧富の拡大、テロリストの出現を招いた……。……『西欧諸国の失態から学び、遅まきながらも絶対不可欠な社会統合政策』を実行すべきだ……。さもなければ、日本の将来、西欧の二の舞いになる可能性がある……。」

 要するに、「将来の日本社会をどのように築くのか」、私たちひとりひとりに問われているということだろう。法務省の統計によると、「平成29年(2017年)6月末現在における中長期在留者数は213万7160人、特別永住者数は33万4298人で、これらを合わせた在留外国人数は247万1458人と、前年末に比べ、8万8636人増となり、過去最高となりました」とある(注②)。日本はすでに隠れた「移民大国」であることを知るべきであろう。  

<注と資料>
(注①)橋本直子さんは「国際移住機関」(IMO)駐日事務所のプログラム・マネージャー(国連職員NOW!第161回より)
(注②)法務省「平成29年6月末現在における在留外国人数について(確定値)
(資料)HUFFPOST「『最悪の移民政策』が招く将来」(朝日新聞、2018年3月20日)

プロフィール

yamashiro94

Author:yamashiro94
東京都内、多摩地方、近県でカメラを持って散策しています。旅行・歴史・地理・文学・音楽などから最近気になったことまで、何でもとりあげています。写真なしの場合もあります。上の写真はマレーシアのクアラルンプール駅。2007年撮影。

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